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空室オフィスから需要の高い住宅へ:新たなクレジット投資機会の台頭老朽化したオフィスビルを集合住宅へと再生することは、複雑性を適切に評価・アンダーライトできるレンダーにとって、魅力的なリスク調整後リターン獲得の機会となるでしょう。
米国の多くの都市において、旧来の働き方を前提に設計された古いオフィスビルは、相対的に高い空室率に直面しています。クオリティ面で下位30%の物件は全米オフィス空室の約90%を占めており1、空室率の全国平均を新型コロナ前の水準のおよそ2倍に押し上げています2。
一方で、住宅市場は正反対の問題に直面しています。人口に対して住宅供給が不足しており、米国では住宅購入コストが所得の伸びを大きく上回るペースで上昇しています。現在、新築住宅を購入するために必要な所得水準は2019年比で約2倍に達しています3。この結果、賃貸住宅への需要は拡大しているものの、建設の停滞により全米では約300万戸の住宅不足が生じています4。さらに、人口増加および世帯形成は2029年まで堅調に推移すると見込まれており、既に逼迫している住宅供給に対する需給圧力は一段と高まると考えられます。
その結果、「既存の不動産」と「必要な不動産」のギャップが拡大しています(図表1参照)。オフィスから住宅へのコンバージョン自体はコロナ禍以前から行われてきましたが、2020年以降にオフィス勤務が減少したことを受け、その動きは加速しています。特に、住宅不足と建設コストの上昇が深刻なニューヨーク市をはじめとする主要大都市圏で顕著となっており、政府による支援策がこれらを後押ししています。
こうしたオフィス転用の進展に伴い、職場としての将来性を失った老朽オフィス資産を対象とするプロジェクトへの資金供給において、魅力的なクレジット投資機会が生まれつつあります。これらの案件は、転用による価値再設定を前提とし、選別的かつ専門的な与信判断を行う投資家にとって、有望な投資領域となる可能性があります。
出所:コースター。
米国は、人口一人当たりのオフィス床面積が世界でもっとも広く5、オフィスビルの平均築年数はすでに50年を超えています6。 老朽化し、質の低いオフィス資産のストック自体は膨大である一方、住宅への転用が現実的に可能な物件は極めて限定的です。集合住宅開発を支えられるだけの人口成長が見込めない市場に位置する、住宅用途への転用を認めない用途地域規制が存在する、あるいはフロアプレートの効率性が低く住宅事業として成立しないなど、基本的な条件を満たさない物件は、低グレードオフィスビルのおよそ半数を占めます7。
そして、これらの条件を満たす建物であっても、多くは経済性の観点から成立しません。多くの市場では住宅賃料水準が転用コストを吸収できるほど高くなく、実質的な公的支援がなければ事業化が困難です。その結果、全米に約80万棟存在するオフィスビルのうち、住宅転用の候補となり得るのは1%未満、約7,000物件にとどまりまっており8、この投資機会の希少性を如実に示しています(図表2参照)。
こうした背景から、これまで高度な専門性を有するプレイヤーが主に手掛けてきたコンバージョンですが、今後、事業採算性の改善が進むにつれ、参入主体の裾野が徐々に広がる可能性もあります。
出所:ブルックフィールド内部調査。
自治体主導の施策が、オフィスから住宅への転用に新たな可能性をもたらしつつあります。ニューヨーク市では、「City of Yes for Housing Opportunity」イニシアチブのもと、約8万戸の新規住宅供給が見込まれているほか、ミッドタウン・マンハッタンにおける転用対象の拡大や、新たな減税制度が導入されています。これらの施策は、ディベロッパーに対する長期的なインセンティブを通じて、プロジェクトの実現可能性を大きく高めています。
ニューヨークのアプローチは、ゾーニングの大幅な見直し、適格要件の拡充、数十年に及ぶ税制優遇といった複数の施策を同時に組み合わせたものであり、米国主要都市の中でも最も包括的なコンバージョンの枠組みとなっています。ワシントンD.C.、ボストン、ロサンゼルスといった他都市も同様のモデルを模索していますが、現時点ではインセンティブが限定的である、適用期間が短い、あるいは要素の一部にとどまるケースが多いのが実情です(図表3参照)。
出所:ブルックフィールド内部調査、自治体ウェブサイト。
オフィス空室率の上昇や住宅不足に対応するため、自治体がより強力な支援策を打ち出す中、実行可能なオフィスから住宅への転用案件の裾野は今後拡大していくと見込まれます。 各種インセンティブが建設コストの一部を吸収することで、これまで高賃料かつ効率性の高い市場に限定されていた転用の実現が、より広範な市場へ広がっていく可能性があります。一方で、プロジェクトを成功に導くにあたっては、技術的知見や高度なストラクチャリング能力を有する、経験豊富なスポンサーおよびレンダーが優位に立つと考えられます。
ブルックフィールドは、マンハッタン金融街に位置する22階建てのオフィスビル「ウォーター・ストリート160番」を、588戸の住宅物件「パール・ハウス」へ転用するプロジェクトに対する融資を行いました。同プロジェクトは3段階に分けて実行され、ブルックフィールドは総額6億5,000万ドルを提供しました。
オフィスセクターにおけるエクイティ評価額は、コロナ禍後の2022年ピーク時と比べて依然として約40%低い水準にあり9、新規のレンダーは相当割安なバリュエーションで参入することが可能です。加えて、実際に転用が成立する老朽オフィスはごく一部に限られるため、投資機会は限定的であり、複雑性を的確にアンダーライトし、迅速に意思決定できる専門性の高いレンダーほど優位性を発揮します。
オフィスから住宅へのコンバージョン案件は、クレジット投資家にとって明確なメリットを有します。転用リスクを厳密に評価できる体制を持つレンダーが限られているため、立地条件に優れ、実現可能性の高い案件であっても、依然として高いリターンプレミアムが確保されています。また、クレジット投資はエクイティのように将来の賃料成長を前提としません。転用の経済性は改善しつつあるものの、エクイティは建設コストの上昇、リーシングの遅れ、市場賃料の伸び鈍化といったリスクの影響を受けやすい一方、クレジット投資家は主として完工リスクおよび安定稼働リスクに対してリターンを得る構造となっています。
さらに、スピードも重要な利点です。転用プロジェクトの工期は、同規模の新規開発と比べて、一般的に12~24か月程度短いケースが多く、早期の安定稼働および償還につながることで、下方リスクの抑制が期待されます10。供給制約の強いサブマーケットにおける堅調な賃貸需要と相まって、転用向け融資は魅力的なリスク調整後リターンを提供する投資機会といえます。
すべてのオフィス転用案件は同じではなく、レンダーには高度な選別力が求められます。アンダーライティング上の主な検討事項は以下のとおりです:
規模
転用プロジェクトには、構造的な安定性と建設コスト効率を確保できる十分な規模が必要である一方、リーシングを迅速に進められる適度なサイズ感も重要です。
立地
コンバージョンの成功は、商業施設、飲食店、公共交通機関などが整備されたエリアに立地するケースが一般的です。ニューヨークのような高密度市場では、同一サブマーケット内であっても、通りが一本違うだけで事業性が大きく異なる場合があります。
効率性
オフィス床面積を市場性のある住宅ユニットへ最大限転換できるディベロッパーほど、迅速なリーシングと高い賃料成長を実現しやすくなります。効率に優れたレイアウトは、不規則な角部屋や利用不能なスペース、採光のない区画などの無駄を最小化し、居住可能ユニット数を最大化します。効率性次第では、同程度の延床面積を持つ2つの建物でもユニット構成や間取りが大きく異なり、プロジェクト経済性に重大な影響を与えます。
スポンサーの選定
コンバージョンは高度に複雑であり、機関投資家レベルの専門性が求められます。経験豊富なディベロッパーは、規制対応や建設リスクを適切に管理し、効率良くプロジェクトを実行することができます。市場は拡大しているものの、リスクを最小化できる実績とトラックレコードを持つディベロッパーは限られています。さらに、十分なエクイティの投入は、貸し手と借り手のインセンティブを一致させ、デットに対するクッションとして機能します。
コンバージョン案件に取り組むディベロッパーは、資金調達パートナーの選定において極めて慎重です。評価されるレンダーには、以下のような共通した強みがあります:
開発分野における専門性と強固な資本基盤を有するクレジット投資家にとって、こうしたコンバージョン案件への資本投入は、投資機会の獲得と同時に、都市部で不足する住宅供給の拡大に貢献する好機であると考えられます。
脚注
1. JLL、2024年。
2. ムーディーズ、2025年6月。
3. CBRE、2025年。
4. JPモルガン、「A shortage of supply: The housing market explained」、2025年10月17日。
5. ブルックフィールド内部調査、2025年12月時点。
6. CBREインベストメント・マネジメント、「Global office report – A two speed market?」、2022年2月。
7. ブルックフィールド内部調査。
8. ブルックフィールド内部調査。
9. グリーン・ストリート商業用不動産プライシング・インデックス(CPPI)、2025年。
10. ブルックフィールド内部調査。
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