オルタナ研究所
クレジット : マルチアセット投資の利点専門的な投資アプローチがもたらす優位性
プライベート・クレジットは、より幅広く複雑な市場へと進化してきました。現在も、プライベート・クレジット・ポートフォリオの中核的な配分先はダイレクト・レンディングですが、オポチュニスティック・クレジット、実物資産クレジット、アセット・バックト・ファイナンスを含む、より広範なプライベート・クレジット領域への関心が高まっています。プライベート・クレジットの資金調達全体に占めるスペシャルティ・ファイナンスの割合は、2024年に僅か4%だったものの、2025年には約20%まで拡大しました¹。
市場の進化に伴って複雑性が増すなかで、深みある専門性と豊富な経験の重要性も一段と高まっています。当社では、専門性と知見を兼ね備えることが重要な差別化要因となり、投資家がリスクをより的確に見極め、投資機会を捉え、市場環境をより精緻に乗り切るうえで役立つと考えています。
プライベート・クレジットの専門化には先例があり、パブリック・クレジット市場の進化とよく似ています。パブリック・クレジット市場は、投資適格債をスタートに、ハイイールド債、シニアローン、ローン担保証券など、より専門性の高いセグメントへと拡大してきました。パブリック市場、プライベート市場のいずれにおいても、当初は標準化されたリスク/リターン特性を提供する比較的均質な市場でしたが、やがて専門知識、ストラクチャリング、クレジット選別がリターンを左右する、より多様な市場へと進化しています。
過去10年間におけるプライベート・クレジット運用規模(AUM)の拡大は、投資家需要の高まりに加え、融資の担い手が従来の金融機関からプライベート・レンダーへと継続的にシフトしていることにも支えられています。一方で、投資先資産そのものは、企業向け融資、不動産デット、アセット・バックト・ファイナンスなど、従来から馴染みのあるものです。大きく変化したのは、市場の裾野が広がり、借り手と投資家の双方が増加したという点です。機関投資家は現在も、同資産クラスへの配分を維持または拡大しています。
出所:プレキン2
プライベート・クレジットが機関投資家のポートフォリオに一段と定着するなか、投資家はダイレクト・レンディングにとどまらず、より専門性の高い投資機会にも目を向けるようになっています。同時に、市場のボラティリティが高まり、借り手の信用力や業績のばらつきが拡大していることから、アンダーライティングや運用会社の選定はこれまで以上に重要になっています。
より明確に意識されるようになっているリスクがいくつかあります。たとえば、PIKの仕組みは借り手に柔軟性をもたらす一方、キャッシュフローの悪化を補う目的で利用される場合には、財務上のストレスを示すシグナルとなることがあります。また、特定のセクターにエクスポージャーが集中すると、特に急速な技術変化が進む分野では、業界固有の混乱に対してポートフォリオが脆弱になる可能性があります。さらに、長期のプライベート資産と投資家の償還ニーズとの間に生じる流動性のミスマッチに対する懸念も高まっています。一方で、一部のセグメントでは、競争圧力を背景に、審査基準の緩和やよりリスクの高い取引条件につながるケースも見られます。
こうしたリスクはプライベート・クレジット固有のものではありませんが、より本質的に重要なポイントを浮き彫りにしています。すなわち、市場が拡大し多様化するにつれ、質の高いアンダーライティングを行うには、資産、ストラクチャー、借り手のファンダメンタルズをより細かなレベルで評価することが一段と重要になっています。こうした動きが、専門性をより重視する傾向を後押ししています。
プライベート・クレジット市場が拡大するなかで、超過リターンの源泉となり得るのは、分析、サービシング、ストラクチャリングが困難なリスクを深く理解することです。物件レベルにおけるキャッシュフローの把握から、インフラ資産を取り巻く複雑な規制の理解、さらには非適格住宅ローン市場における借り手属性の分析に至るまで、リスクの根源を理解し、適切に管理することが優位性につながると当社では考えています。
オポチュニスティック・クレジット: オポチュニスティック・クレジットは、個別要因によるストレスや市場の混乱によって魅力的なリスク調整後リターンが生まれ得る投資機会を幅広く捉えることを目指します。ディストレスト投資や事業再編を基盤とするこの戦略では、確実性、迅速性、ストラクチャリングの柔軟性を備えた資本ソリューションを必要とする借り手に注目します。ディストレスト債務、レスキュー・ファイナンス、個別設計型の資本ソリューションなど、幅広い投資機会に投資することで、リターン源泉の分散が期待できます。
オポチュニスティック・クレジットでは、従来の資金調達先が資金を提供できない、あるいは資金提供に消極的となる複雑なシチュエーションに対応する能力が、投資上の優位性につながることが少なくありません。こうした投資機会には、財務面でストレスを抱える借り手、複雑な資本構成、法務や事業再編に関する論点、あるいは個別対応型のソリューションを必要とする資金調達ニーズなどが含まれます。こうした投資を適切にアンダーライティングするには、クレジット分析、事業再編、資産評価、回収可能性の評価に関する専門性に加え、構造上の強固なプロテクションを交渉する能力も求められます。多くの場合、投資成果を左右するのは市場全体の方向性というよりも、下方シナリオを的確に評価し、取引を適切に組成するとともに、柔軟性と確実性が最も重視される局面で資本を提供できるかどうかという、運用会社の力量です。
不動産デット: 不動産クレジットは、不動産資産を担保に、通常はシニアローン、ホールローン、メザニン・ファイナンス、その他のストラクチャード・クレジットを通じて資金を提供する投資手法です。実物資産を担保とすることによる保全性と契約上のキャッシュフローを活かしながら、魅力的なインカムとリスク調整後リターンの獲得を目指します。伝統的な債券投資とは異なり、不動産クレジットは相対取引を通じて組成されることが多く、投資家は個別のニーズに応じたソリューションを設計し、不動産セクター、地域、市場サイクルをまたいで投資機会を捉えることができます。
不動産デットにおける信用リスクの把握には、借り手の評価だけでなく、裏付けとなる資産そのものの分析も必要です。投資家は、物件レベルのキャッシュフロー、市場のファンダメンタルズ、リーシングの動向、開発リスク、スポンサーの質、担保価値などを、複数の物件タイプや地域にわたって分析する必要があります。そのため、個別資産に関する専門性と、特定セクター内でレラティブバリューを見極める能力が、これまで以上に投資成果を左右するようになっています。不動産の保有・運営・投資に関する経験を持つ運用会社は、リスク評価、投資機会の発掘、そして変化する市場環境を通して資本の保全を目指す投資ストラクチャーの構築において、優位性を有する可能性があります。
インフラストラクチャー・デット:インフラストラクチャー(インフラ)デットは、再生可能エネルギー、公益事業、データセンター、運輸ネットワーク、エネルギー・インフラなど、社会に不可欠なサービスを提供するインフラ資産や事業に対して資金を提供する投資手法です。インフラ分野の資金需要は今後も拡大すると見込まれており、2040年までに世界全体で推定10兆米ドルが必要とされるなか、魅力的な投資機会の発掘やリスク管理において、専門性や運営経験がこれまで以上に重要な差別化要因となる可能性があります。
不動産デットと同様に、インフラ・デットでも、クレジットに関する専門性と運営に関する知見を組み合わせることの重要性が高まっています。多くのインフラ資産は複雑な規制の枠組みのもとで運営され、長期契約に依存しているため、各セクター固有の特性を詳細に理解することが求められます。こうした投資機会のアンダーライティングでは、再生可能エネルギー、公益事業、輸送、デジタル・インフラなどの分野において、キャッシュフローの持続性、資産の質、レバレッジ、規制リスク、契約上の保護措置などを評価する必要があります。
資産担保融資(ABF):ABFは、専門性が競争優位につながることを最も明確な例の一つです。企業の信用力を主な判断材料とするのではなく、裏付けとなる資産の集合体と、そこから生じるキャッシュフローを基に投資判断を行います。各セグメントには、それぞれ固有の法的枠組み、サービシング要件、担保特性、パフォーマンスを左右する要因があり、再現が容易ではない専門的な知見が求められます。そのため、投資成果は、個別資産レベルの分析、データ、サービシング能力、構造上のプロテクションによって左右されることが少なくありません。
プライベート・クレジット市場が拡大を続けるなか、セクターやストラクチャーによって投資成果のばらつきも一段と大きくなる可能性があります。こうした環境では、運用戦略と事業運営に関する知見との結びつきが強まり、ストラクチャーの複雑性も増すなかで、運用会社の選定にはこれまで以上に慎重な見極めが求められます。そのため運用会社の評価にあたっては、投資案件そのものをアンダーライティングする場合と同等の厳格さが必要であり、案件のソーシング力、アンダーライティングの規律、ストラクチャリングの専門性、リスク管理などについて十分なデュー・デリジェンスを行うことが重要です。
当社では、精緻なアンダーライティング、事業運営に関する洞察、そして資産レベルでリスクを評価する能力が投資成果を左右すると考えています。豊富な投資経験と事業運営の専門性を組み合わせた統合的な枠組みを活用することで、借り手の行動、信用需要、資金フローをその源泉から捉える差別化された視点を得ることができ、複雑性を増すプライベート・クレジット市場を投資家が適切に見極めていくうえで役立つと考えます。
脚注
1. With Intelligence、S&Pグローバル、Private Credit Fundraising Report 2025、2026年4月発行。スペシャルティ・ファイナンスには、主にアセット・ベースト・ファイナンスおよびファンド・ファイナンスが含まれるほか、航空機ファイナンス、ロイヤルティ、重要リスク移転(SRT)、生命保険契約の買取も含まれます。
2. すべての数値は名目値です。サブ戦略別の世界のプライベート・クレジット運用資産残高(AUM)*(10億米ドル)。AUMの数値には人民元建てファンドを含みません。数値は各年末時点のものです。年率成長率を示す線の傾きは、実際の成長率に比例していません。二重計上を避けるため、合計欄にはファンド・オブ・ファンズを含みません。合計にはBDCを含みますが、その他のセミリキッド・ファンドは含みません。
3. Global Infrastructure Outlook - G20イニシアチブ。
4. ゴールドマン・サックスMusic in the Airレポート(2025年)。
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