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データインフラ投資は「需要」から「制約」の時代へ

データインフラでは、コネクティビティ(接続性)とそれを取り巻く制約要因が、どの資産を開発・拡張できるか、そしてどの資産が持続的なリターンを生み出せるかを、ますます左右するようになっています。

2026年6月4日
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データインフラでは、コネクティビティ(接続性)とそれを取り巻く制約要因が、どの資産を開発・拡張できるか、そしてどの資産が持続的なリターンを生み出せるかを、ますます左右するようになっています。
 

主なポイント

  • データインフラの開発・拡張を左右するのは、もはや需要だけではありません。電力、用地、許認可、コネクティビティといった制約が、プロジェクトの実現可能性を決定づけています。
  • 電力供給を確保し、優れた立地条件と長期契約に支えられたネットワーク接続を備える資産は、安定した運用成果を生み出しやすいと考えられます。
  • 希少な資源へのアクセス、確かな実行力、そしてプラットフォームの規模が、投資成果の差別化をもたらす重要な要素であり、足元の投資機会を捉える上で競争優位の源泉となっています。


インフラ投資における構造的な変化


クラウドコンピューティング、モバイル通信の利用拡大、AI(人工知能)の普及を背景に、データセンター、光ファイバー網、通信塔などのデータインフラはインフラ投資における中核的な投資分野となっています。

こうした需要拡大は広く認識されています。一方で、投資成果を左右する要因が、需要そのものから、コネクティビティとそれを取り巻く制約へと移りつつあることは、十分に認識されていません。その結果、投資成果を左右するのは需要だけではなく、インフラを整備できる立地と、資産を継続的に開発・拡張できる能力となっています。

データインフラは、電力、立地、ネットワーク接続が相互に機能する一体的なシステムです。これらのいずれかに制約が生じれば、需要が旺盛であっても必要な設備容量を供給することはできません。

かつては幅広く存在していた開発機会も、現在では選別色が強まっています。このような環境下で重要となるのが、十分な投資余力と高い実行力です。

例えば、モバイルブロードバンドの通信エリアは現在、世界人口の96%をカバーしています。一方で、30億人超、すなわち世界人口の約40%は依然としてモバイルインターネットを十分に利用していません(図表1)。この「利用ギャップ」は、データ利用量が今後も大きく拡大する余地があること、そしてそれを支えるデータインフラへの需要が引き続き高まることを示しています。
 

図表1:コネクティビティは広く普及している一方、利用は依然として十分に進んでいない

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コネクティビティは広く普及している一方、利用は依然として十分に進んでいない

出所:GSMAモバイル・コネクティビティ・インデックス、2026年5月時点。注1参照。


コネクティビティ、デジタル成熟度、そして成長機会


デジタルインフラは、データの生成・伝送・保存を支える相互接続されたインフラ資産で構成されています。

これには、コンピューティング能力とデータ保存容量を提供するデータセンター、大容量通信を担う光ファイバー網、無線通信を支える通信塔およびスモールセル、さらにはサービスが十分に行き届いていない地域まで通信エリアを拡大する衛星通信システムが含まれます。

これらの資産は一体となって機能する統合的なシステムを形成しており、大規模なコネクティビティを実現するためには、それぞれのレイヤーが相互に連携することが不可欠です。

デジタルインフラの整備状況は依然として地域間でばらつきがあり、デジタル成熟度の違いを反映しています(図表2)。一部の市場では、依然として基本的な通信カバレッジの拡大が最優先課題となっています。一方、その他市場では、デジタルサービスの急速な普及を背景に、ネットワークの高密度化が進み、光ファイバーや系統接続ンへの需要が拡大しています。一方、デジタル化が進んだ市場では、高い普及率を達成しているものの、電力、用地、ネットワーク容量といった制約が、ますます顕在化しています。
 

図表2:制約が顕在化している分野

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制約が顕在化している分野

あらゆる市場環境に共通しているのは、インフラ整備の成否を左右する要因が、需要よりも構造的な制約へと移りつつあるという点です。

多くの市場では、電力の確保が開発における最大の制約となっており、さらに許認可手続きや系統接続がプロジェクトの長期化を招いています。より広い視点では、送電網の拡張、規制・許認可手続き、人材不足などを背景に、プロジェクトの実行リスクも高まっており、開発の遅延や工程の遅れにつながる可能性があります。

コネクティビティもまた、物理的な制約の影響を受けます。ネットワークを長距離にわたって延伸したり、海底ケーブルを敷設したりする場合には、コストと技術的な複雑性が増します。また、高周波帯を利用する無線ネットワークでは、通信品質を維持するために、より高密度なインフラ整備が求められます。

モバイルデータ通信量は、現在も年間20~30%のペースで増加しており、ネットワークの高密度化を継続的に進める必要性が高まっています。²

ブロードバンドネットワークでは、コネクティビティはますます公益事業に近い性格を持つようになっています。光ファイバーは通信容量とネットワークの強靭性を支え、衛星通信技術は通信サービスが十分に行き届いていない地域へのカバレッジ拡大に貢献しています。

最も魅力的な投資機会は、需要が明確に見込まれる一方で、インフラ整備が十分に進んでいない、あるいは構造的な制約が残る市場に存在すると考えられます。

 

構造変化が加速 


AIの普及により、データインフラに対する需要は量・質の両面で拡大しており、とりわけ電力や立地を巡る既存の制約が一段と顕在化しています。データセンターの電力需要見通しには依然として大きな不確実性があります。その背景には、電力効率の向上、AIの普及・活用の進展、およびエネルギー分野における供給制約など、さまざまな要因が存在します。

高成長シナリオでは、世界のデータセンター電力需要は2030年までに1,000テラワット時(TWh)を超えると予測されています。これは、AI関連ワークロードの急速な拡大を反映したものです(図表3)。こうした需要の拡大は、データインフラに必要とされる能力が質・量ともに大きく変化することを意味します。この水準の需要に対応するには、発電能力、送電網容量および系統接続の大幅な拡充が不可欠です。しかし、これらはいずれも開発に長い期間を要し、構造的な制約を伴います。
 

図表3:世界のデータセンター電力需要は急速に拡大している

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世界のデータセンター電力需要は急速に拡大している

出所:国際エネルギー機関(IEA)、「Energy and AI」、2025年4月。注3参照。

AIワークロードは、大きくモデル学習と推論の2つに分類されます。モデル学習には膨大な計算能力が必要であり、十分な電力供給を確保できる地域に設置しなければなりません。一方、リアルタイム推論では低遅延が求められるため、インフラはエンドユーザーの近くに配置する必要があります。

このため、大規模な電力供給を確保したデータセンター・キャンパスと、低遅延に対応する分散型インフラの双方が必要となります。

一部のワークロードは電力供給に余裕のある地域へ移転することが可能ですが、多くの需要は依然として制約の大きい市場に集中しています。AIはインフラ整備の原則を変えるものではありません。変化しているのは、従来から投資成果を左右してきた電力、立地、ネットワークといった要素の制約が、一段と厳しさを増していることです。このような環境において、課題は需要の有無ではありません。適切な場所、適切なタイミングでインフラを整備できるかどうかが、成否を左右する要因となっています。

 

投資成果を左右する要因 


このような環境下で優れた成果を上げる投資には、いくつかの共通する特徴があります。

それは、電力、用地、系統接続といった希少な資源へのアクセスを確保するとともに、収益の予見可能性を備え、長期にわたって拡張可能な事業モデルを有していることです。

長期契約が安定したキャッシュフローを支える一方、十分な事業規模と高い稼働率を備えたインフラは、需要の拡大に応じて高密度化、拡張、あるいは複製することで、資産の活用効率をさらに高めることができます。

こうした特性は、投資成果が物理的・構造的な制約によって左右される今日の市場環境において、極めて重要です。主要な資源を確保し、制約下でも事業を拡張できる資産は、持続的な競争優位性を享受しやすい傾向があります。

こうした投資を実現するためには、資本だけでは不十分です。早い段階で電力を確保し、許認可手続きを進め、開発を適切に管理するとともに、設備容量を長期的な需要に合わせて最適化する実行力が不可欠です。⁴インフラ需要の拡大と実際の開発に要する期間とのミスマッチは、特に電力システムにおいて顕著です(図表4)。インフラプロジェクトは、計画より約20%長い期間を要し、予算を最大80%超過する場合がある点は、規律あるプロジェクト遂行の重要性を強調しています。
 

図表4:インフラの種類別にみる標準的な整備期間

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インフラの種類別にみる標準的な整備期間

出所:国際エネルギー機関(IEA)、「Electricity 2026」、2026年2月。

実際のところ、このような環境では、十分な投資余力、案件ソーシング力、および運営・開発に関する専門性を備えた投資家が優位に立ちます。投資機会を発掘し、パートナーシップを組成し、複雑な開発プロジェクトを遂行する能力が、インフラ資産開発の実現を左右します。

データセンター、光ファイバーネットワーク、通信塔のいずれにおいても、共通する構図が見られます。それは、投資リターンのドライバーは、契約に裏付けられた収益、高い稼働率、そして制約のある環境下でも事業を拡張できる能力だという点です。

 

制約のある市場における投資機会


データインフラは、ディフェンシブな特性とデジタル化という長期的な成長トレンドへのエクスポージャーを兼ね備えており、機関投資家のポートフォリオにおける中核的な投資対象となっています。

投資機会の拡大が見込まれる一方で、その機会をどこまで取り込めるかは、インフラをどこで整備できるか、そして現実に存在するさまざまな制約にどれだけ効果的に対応できるかに左右されます。

今後は、電力、コネクティビティ、戦略的な立地へのアクセスに加え、インフラを実現するために必要な資本力と実行力が、投資成果を左右する重要な要因になると考えられます。

すべての設備容量が同じ価値を持つわけではありません。すべての立地が再現可能なわけでもありません。また、すべての成長が投資リターンにつながるわけでもありません。

このような環境における優れたプラットフォームとは、希少な資源へのアクセスに加え、契約に裏付けられた予見可能なキャッシュフローと、長期にわたり事業を拡張できる能力を兼ね備えたものです。こうした特性を備えてこそ、構造的な制約をインフラ資産らしい持続的なリターンへと転換することが可能になります。

データインフラ投資の次なるステージで勝ち組となるのは、誰が最も多くのインフラを開発するかではなく、最も制約の大きい投資機会を継続的に見い出し、確保し、着実に実行できるインフラ投資家であると当社では考えています。
 

注記

1 . 対象は197か国の総人口です。四捨五入の関係上、合計値が一致しない場合があります。GSMAインテリジェンスは毎年、各国のモバイルインターネット加入者数の推計を更新しており、通信事業者、規制当局、各国統計機関および利用可能な場合には消費者調査などの最新データを反映しています。そのため、一部の国・地域におけるモバイルインターネット普及率の推計値は、「The State of Mobile Internet Connectivity」の過去版に掲載された数値と異なる場合があります。ユニーク加入者数のデータはGSMAインテリジェンスに基づいています。通信カバレッジのデータは、通信事業者および各国規制当局から報告された情報を統合したGSMAインテリジェンスのデータを使用しています。人口データは国連(UN)に基づいています。

2. PwC、「Perspectives from the Global Telecom Outlook 2024–2028」、2025年3月、Omdia。

3. これらの数値は、技術および政策上の意思決定に資するためのシナリオ分析であり、予測値ではありません。AIの普及規模や、追加的なサービス需要をどの程度効率的に満たせるかなど、多くの不確実性を考慮することが重要です。高成長シナリオ:AIの普及が一段と進展し、デジタルサービスに対する世界的な需要がさらに拡大した場合の影響を想定しています。ベースケース:データセンターの電力需要は大幅に増加するものの、2024年から2030年までの世界の電力需要増加に占める割合は10%未満と想定しています。高効率シナリオ:AIおよびデジタルサービス需要はベースケースと同様に推移すると仮定する一方、デジタル技術の普及拡大に伴う電力需要の増加を相殺するため、複数の省エネルギー施策が実施されることを前提としています。逆風シナリオ:サービス需要の伸びが他のシナリオより緩やかであり、AIの普及も比較的緩やかに進展することを想定しています。

4. マッキンゼー&カンパニー。

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